今は官民連携の初動期。赤裸々な悩みも共有していきたい

「多摩未来円卓会議」は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。毎回異なるひとつのトピックについて、企業や行政などが意見を交換。互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題をシェアする関係性をつくることを目指します。
第1回は東村山市がトピック提供者となり、「企業や住民との連携を加速させる仕組みづくりとは?」と題して議論が繰り広げられました。参加したのは、日野市、府中市、日立製作所 研究開発グループ。会議の様子や得た気づきについて、東村山市 経営政策部 経営改革課 課長の谷伸也さんが語ります。

多摩未来協創会議ディレクター 酒井博基(以下「酒井」)あらためて、円卓会議で発表されたトピックの概要をお聞かせください。

東村山市 谷伸也さん(以下「谷さん」)今回お話しさせていただいたのは、東村山市がこれまでに取り組んできた官民連携についてです。

東村山市では、平成29年度に地域プラットフォームを立ち上げました。地域の民間企業やNPO、金融機関の方々に参加していただき、市が抱えている課題や悩みを共有しながら、「市民に対してよりよい公共サービスを提供するにはどんなことができるか」「地域課題を解決するにはどうしたらいいか」といったことについて意見交換できる場です。

今も定期的に開催していて、参加者のなかにはすでに市の事業にご協力いただいている方もいらっしゃいますし、そうではなく関心があって参加いただいている方もいます。開催するたびに、「いろんなことが共有できてよかった」というお声をいただいています。

そんな取り組みのなかで、令和元年度に民間事業者提案制度に基づく事業提案を実施しました。それまで市でなにか事業を行うときは、市が固めた仕様に沿ったものに手を挙げる価格競争での入札、もしくはプロポーザルで受託者を決めていましたが、市が仕様を固めるのではなく、民間企業に「市が抱えている課題に対して、私たちならこうやって課題解決が図れますよ」と“逆アプローチ”をしてもらう方法です。

事業者からたくさんの提案をいただき、そのなかから27事業を採択しました。事業化を目指して詳細な打ち合わせを重ねていき、円滑に事業化できたものもあれば、やってみたものの成果が測りにくかったもの、調べていくと法的な壁やいろいろな課題があって打ち合わせが停滞しているものなど、現在の進捗はさまざま。ただ、そんなふうにさまざまなケースがあるとわかったことは、ひとつの大きな成果なのかなと思っています。

円卓会議ではそういったことをお話しさせていただき、同じようなことを考えている自治体や民間企業さんがいらっしゃるのか、また、官民連携に対してみなさんがどんな思いを持っているのかを知りたいと考えました。

酒井今回参加したのは行政機関である日野市と府中市、そして民間企業である日立製作所。官民連携はみなさんにとっても関心度の高いトピックでした。議論を振り返っての所感をお聞かせください。

谷さんやはり感じたのは、「どこも同じような悩みを抱えているんだな」ということでしょうか。外に同じことを考えている人がいると知れただけで、ものすごく勇気がもらえました。それから、成功体験はぜひほかの自治体にも共有したいなと。どの自治体でもできる取り組みであればみんなで共有して、多くの自治体の成功体験につなげていくことができればと感じました。

今はまだ新しい官民連携が走り出して間もない時期だとしたら、多くの成功体験を語るには難しいかもしれません。その代わりではないですが、初動期ならではの悩み、たとえばどうやって長の了解を得るかといった、生々しい相談があってもいいと思います。

酒井円卓会議はオフィシャルな場から少し離れた場であり、有志による情報共有という位置付けだからこそ、そんな悩みも共有しやすいかもしれませんね。今後、円卓会議でどのようなことを議論していければいいなとお考えですか?

谷さん地域に入ってなにかやっていきたい、地域課題に働きかけたいという民間企業さんにとって、参入しやすい規模感を伺ってみたいです。ひとつの市なのか、もっと広いエリアという単位なのか。後者のほうが参入しやすいということであれば、たとえば多摩エリアの自治体が連携して、民間企業にコラボレーションしませんかと声をかけることも考えられると思います。

酒井円卓会議では、「どういう共通課題があり、そこに対してどう共通目標を見出して、そのときに連携が必要であれば連携する」「連携はあくまでも手段であり、連携すること自体が目的化してはいけない」という話も出ましたね。たしかに、ひとつの自治体のほうがうまく回るケース、広域に連携したほうがうまく回っていくケースなど、事業によってもいろいろなパターンが考えられそうです。

谷さんそうですね。いろんな人と話をしていくなかで見えてくるのかなと考えています。

酒井最後に、今後多摩未来円卓会議にどのようなことを期待していますか?

谷さん円卓会議をはじめとした多摩未来協創会議の取り組みを、ほかの部署にも知ってもらえたらと思っています。というのも、市役所にはさまざまな情報が入ってきますが、土木関係の部署には土木の情報、子育て関係の部署には子育ての情報しか入ってこないんです。多摩未来協創会議は分野を特定していないので、ぜひ多くの人に知らせてあげたい。毎回、「今回は東村山市から○○の専門部署の人が参加します」と他部署間で気軽に情報共有ができるようにするために、まずは認知度を高めていくことがキーになると思います。


多摩未来円卓会議は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。
毎回異なるトピックテーマについて、企業や行政などの組織が意見を交換し、互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題を共有する関係性の構築を目指します。
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