アンオフィシャルだからこそ聞けた実例がヒントに

「多摩未来円卓会議」は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。毎回異なるひとつのトピックについて、企業や行政などが意見を交換。互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題をシェアする関係性をつくることを目指します。
今回のトピック提供者はジェイアール東海エージェンシーの水野義也さん。JR中央線コミュニティデザイン、京王電鉄、日立製作所 研究開発グループ、シェアサイクルのサービスを運営するOpenStreetが参加し、Maasについてさまざまな視点から語りました。

多摩未来協創会議ディレクター 酒井博基(以下「酒井」)今回は「MaaS」をテーマに多摩エリア内での移動について議論が交わされました。このトピックを提供するに至った経緯を教えていただけますか?

ジェイアール東海エージェンシー 水野義也さん(以下「水野さん」)僕はもともとJR中央ラインモール(現・JR中央線コミュニティデザイン)で三鷹・立川駅間の地域連携や地域活性化に関わり、駅ビル開発、地域イベント企画・実施や二次交通の連携や情報発信の業務を行っていました。その後ジェイアール東海エージェンシーに転職し、現在は東京・名古屋・大阪の三大都市圏をつなぐ広域なエリアで交通や観光プロモーションに携わっています。

広域になればなるほど関わるステークホルダーが多くなり、それぞれの関連する企業の事情や施策が複雑に重なって調整がすごく大変になると感じています。MaaSについての課題解決を行っていくうえではもう少し対象を細分化して、ローカルエリアなど小さく展開していくべきなのではないかと最近感じています。そんなとき、多摩未来円卓会議の話を聞いて、僕自身の原点に立ち返り、まずは多摩エリアというローカルエリアのMaaSについて議論をしてみたいと思いました。

酒井広域になるとステークホルダーによって共通課題に対する優先順位に違いが生まれ、そのなかでの合意形成が難しい。それゆえに、コンパクトなエリアのほうが共通課題が絞り込みやすいということでしょうか?

水野さんそれはあると思います。広域になるほど関わる企業自体が大きくなりますし、そういう意味でビジネス要素がより強くなるというか。決定権を持つ人たちの存在が大きいと、結果が現場の意思とは違う方向に動くこともよくあります。その決定プロセス自体が悪いということはありませんが、ローカルであるほど、課題認識を理解し合いやすくなるのではないでしょうか。

酒井今回の円卓会議では、マネタイズや各社が抱えている課題などさまざまなことが話題に上がりました。議論を終えた率直な感想を聞かせてください。

水野さん街には当然、住む人がいて、活動する人がいて、そのなかに移動という行為があって。その移動ニーズをエリアごとに課題解決する必要があるとあらためて感じました。参加いただいたみなさんの話には、過去に取り組んだものの思うような結果が出なかった施策についてなどもあり、非常に参考になりました。

酒井ほかにも、社内での合意形成の壁にまつわる話など、オフィシャルな場では話題に上がりにくいことも聞けたのはおもしろかったですね。

水野さんそうですね。僕の業務では多摩エリアを対象にすることはないものの、今後たとえば中部エリアでなにか施策を行ったときに「円卓会議で聞いた話とすごく似てるな」と感じるようなことがあるんじゃないかと思います。

酒井鉄道会社であるJR中央線コミュニティデザインと京王電鉄がいるなかで、ジェイアール東海エージェンシーの水野さんがトピック提供するという構図がすごくおもしろかったなと思っていて。会社の看板を下ろし、各々が抱えている課題や互いの連携の可能性を、個人の発意を起点に話せたというのは多摩未来円卓会議ならではだと思いました。

水野さんそうですね、個人的にも得るものは大きかったです。

酒井今後、多摩未来円卓会議でさらに議論したいことはありますか?

水野さん今回はMaaSにとらわれずいろんな話ができたと思うのですが、次回は市区町村単位での課題抽出や課題解決など、もう一歩深掘りできたら。ワークショップ形式にするのもいいですよね。そのときに、「このエリアでこういう事例があったから、国分寺市でもできるんじゃないか」など、より具体的な事例やアイデアを寄せ集めることができたら、より質の高い会議になっていくのではないかと思います。

酒井多摩未来円卓会議は、水野さんがふだん参加されているMaaSの勉強会とは少し違う印象でしょうか?

水野さんそうですね、普段参加しているコンソーシアムなどは、MaaSの全国的、世界的な動きについての情報収集が目的です。そこでは企業同士のオフィシャルな情報交換も行われていますが、どこかのエリアに対してみんなでなにかやるといった流れにはなかなかなりません。そこが大きく違うところでしょうか。

酒井なるほど。やはりオフィシャルとアンオフィシャルの違いは大きいのですね。最後に、これからの多摩円卓会議に期待することがあれば聞かせてください。

水野さん円卓会議が終わったあと、参加者の方と「実際に次のアクションに持っていかないともったいないですよね」という話をしました。議論して満足してしまうのではなく、成果がちゃんと出てくればいいですよね、と。今回は会社というより個人として参加しましたが、僕もなにかしらの形で次につなげていけたらと思います。


多摩未来円卓会議は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。
毎回異なるトピックテーマについて、企業や行政などの組織が意見を交換し、互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題を共有する関係性の構築を目指します。
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