行政と企業、それぞれの視点から“継続できる共創”を考える

「多摩未来円卓会議」は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。毎回異なるひとつのトピックについて、企業や行政などが意見を交換。互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題をシェアする関係性をつくることを目指します。
第4回のトピック提供者は日野市 企画経営課 戦略係の鈴木賢史さん。行政から八王子市、東村山市、武蔵野市、国分寺市、企業から日立製作所、コニカミノルタが参加し、官民連携の促進について議論しました。

多摩未来協創会議ディレクター 酒井博基(以下「酒井」)円卓会議ではどのようなことを発表しましたか?

日野市 企画経営課 戦略係 鈴木賢史さん(以下「鈴木さん」)「共創のススメ」というテーマでトピック提供をさせていただきました。というのも、東村山市さんがトピック提供された多摩未来円卓会議に参加した際、課題感など共感するところが多々あったんですね。それを踏まえて、多摩地域全体で企業、行政、市民がつながれる共創の場をつくれるとしたら、私たちが担える役割や必要な仕組みはなんだろうか。そういうことを考えたいと思い、このテーマを設定しました。

日野市では、6、7年ぐらい前から官民連携に取り組んでいます。日野市には日野自動車さんなど大企業も多い。地域産業の構造の転換が起こり、課題になり始めた2010年代以降、企業さんとの連携からスタートしました。

また、リビングラボという形で、企業さんと共同で研修や実習、共同プロジェクトも行ってきました。そこで起こったことや、企業さんや住民の方からあがった意見をシェアしました。

行政が共創や官民連携に本気で取り組むのには、大変なところもあります。特に、地域と市民と企業さんとをつなぐコーディネートの部分。閉じた行政の世界で取り組むにあたってはさまざまな壁がありました。円卓会議では、そういう“中間の立ち位置”においての課題をみなさんに伺ったりもしましたね。

酒井第1回多摩未来円卓会議での東村山市さんの話を踏まえ、あらためて課題感をみんなで共有していこうという非常に貴重なトピック提供だったと思います。議論の感想をお聞かせいただけますか?

鈴木さん率直に、すごくおもしろかったです。アンオフィシャルな場だからこそ、ふと浮かんだ考えも気軽に共有できました。

それから、以前から官民連携と共創は似ているようで違うところもあるのではないかと思っていたのですが、日立さんが話してくださった“1対1の関係性とn対nの関係性”の対比についてのお話が非常に参考になりました。

1対1だとその二者間の関係性はうまくいくかもしれませんが、私たちはあくまでも最終的に社会にどう作用するかにこだわるべきだと考えていて。それはつまり、住民の生活を少しでもいい形にするということです。そうなると、企業さんと行政だけでなく、いろんな住民の方を巻き込むことが重要なのではないかと感じました。

日立さんは企業なので僕ら行政と立場は違いますし、各々の組織で求められることも違うとは思いますが、折り合えるポイントが見えたような気がします。それは多分、行政と行政だけで話してもたどり着かない部分だと思います。

酒井今後、多摩未来円卓会議でどのような議論をしたいですか?

鈴木さん議論したうえでなにか一緒にできればいいですよね。たとえば行政が企業さんから学べるような機会をつくったり。これまでリビングラボなどに取り組むなかで、継続していくことは一番の肝であり、同時に最も難しいことだと痛感しました。だから、企業さんが社内にどのような動きを持ち、どのようなポイントのもと、意思決定者に対してどういうことをしたら続けやすくなったり、実際にビジネスモデルをつくるうえで有用だと思ってもらえるのかとか、そんなことを共有いただけるとすごくいいなと。

セミナーなどで行政側の状況を企業さんにお伝えする機会はそれなりにありますし、企業さんはそういうことに対してすごく勉強しているイメージがあるのですが、行政は受け身になることが多くて。だからあえて逆をやってもいいのかなと思います。

酒井行政からのアプローチを増やしたいということですね。

鈴木さんそうですね。大手企業が事業を展開するうえで、まずは小規模から始めるときにも、行政側から言えることがあるかもしれません。

たとえば、シェアリングエコノミー。基本的なモデルはユーザーから手数料をとる形だと思うのですが、社会福祉協議会などの委託を受けながら、利用者の負担を抑えるといった工夫が考えられます。それが地域での見守りの普及にもつながっていきますし、ユーザーは安く利用できる。そういう仕立てもあると、ほかの街への展開が説明しやすくなるのかなって。ユーザーと企業、ユーザーと行政だけではない、新たな関係性を築くことが課題解決にもつながるかもしれないということも多摩未来円卓会議で議論できたらと思いました。

酒井今後、多摩未来円卓会議に期待することはありますか?

鈴木さんこの会議は、なんというか……「へり」みたいな存在なのかなと。社名や大義名分を背負ってガチッと交わるのではなく、もっとサラッと交わるような、その感じがすごくいいなと思うんです。そういう、いろんな領域をゆるく触っている「へり」のような感じを継続できると、すごく魅力的だなと思います。

現在のように特定のテーマに関心を持った有志が集まる形を継続するのもいいですが、それ以外の方もどんどん巻き込んでいくのもいいですよね。役所は数年前にくらべると、企業さんをはじめとした外とのつながりを求めているような気はしていて、「こういうことをしたいんだけど」と内部の人から相談される機会も増えています。多摩未来円卓会議が、アンオフィシャルであり、オフィシャルとしてもうまく活用できるような場になっていくとすごくありがたいです。


多摩未来円卓会議は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。
毎回異なるトピックテーマについて、企業や行政などの組織が意見を交換し、互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題を共有する関係性の構築を目指します。
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