「働く」ということとつないで実現したい主観的な幸福感が得られる社会

「多摩未来円卓会議」は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。毎回異なるひとつのトピックについて、企業や行政などが意見を交換。互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題をシェアする関係性をつくることを目指します。
第5回のトピック提供者は日立製作所 研究開発グループの桑原亜希子さん。地域価値向上と人材シェアリングについて議論しました。

多摩未来協創会議ディレクター 酒井博基(以下「酒井」)今回の円卓会議は非常に内容の濃いものとなりましたが、提供されたトピックについてご説明いただけますか。

日立製作所 研究開発グループ 桑原亜希子さん(以下「桑原さん」)今回は「地域価値向上と人材シェアリング」というテーマで話題提供をさせていただきました。すべての人が地域や社会、組織の中で自分の存在意義を見つけて自分らしく挑戦し続けられたり、生きがいを感じられたりという、主観的な幸福感が得られる社会にしたいというのが個人的な思いです。それを「働く」ということとつないで実現したいということを申し上げました。

その背景として、雇用者の視点とグローバルに成長するための企業としてのイノベーションの視点、就労者側のキャリアや働くという価値観の視点、そして地域社会の視点という4つの側面からの課題をそれぞれ挙げさせていただきました。それらを同時に解決していく方法はないかということで、仮説を立てながら地域と人材を結び付けられないかと。

私自身もそうですが、コロナ禍で多くの働いている人たちが地域で過ごすようになり、地域と自分の関わりを見出したいと思うようになりました。また企業という観点でも、これまでの仕事や事業のやり方が変わってきており、「リビングラボ」や「Fab Lab」に代表されるように、ビジネスも人間の暮らしを起点としたサービスやモノづくりへの志向が高まっています。そうすると物事の発想や捉え方が地域軸で考えられるのではないかと思います。

また、私が現在取り組んでいる内容として、就労者視点でキャリアを棚卸しするソリューション開発の事例と、そこから得られた示唆についても共有させていただきました。自分を正しく理解できている人が比較的少なく、多くの人が自己認知バイアスを持っていることが分かったんです。その認知バイアスを解消しながら、働く場や生きがいを持ったり、成長できたりする場を見つけられるような、そういうものをアレンジする地域や企業の連携もあり得るのではないかということでご提案させていただいたということになります。

酒井円卓会議に参加されたみなさんとの議論はいかがでしたか?

桑原さん就労者側には様々なペルソナがいます。そのペルソナの中でどこがターゲットとしてボリュームゾーンになるのか、この点が、事業の観点では非常に重要です。実は今回の円卓会議では、キャリアトランジションして比較的成功しているだろうという方からの学びを得たいと思い、コーディネートしていただきました。

ご参加いただいた方は思った以上にトランジションが成功している方々で、自分もそうなりたいと思う人がたくさん増えるような、そんなお話がうかがえて私自身もワクワクしました。一方で、ソリューション開発で実証実験をやった結果では、自分のことを正しく理解できていないために自分の道を探すのが難しいという方も多く、そういう方々には今回のキャリアモデルは非常にハードルが高いんです。このターゲティングとソリューションの方向性がどうあるべきかということが、今回の円卓会議で非常にクリアになってきたと思います。

酒井誰もが理想的なキャリアモデルのようにいくわけではないという中で、誰のどういう思いに寄り添っていくのかということと、そこに対してテクノロジーがどう貢献できるのかということ、さらにはそれをビジネスモデルに落とし込んでいくには…というところにも議論が進んでいきましたね。

桑原さんはい。地域と企業が人材をシェアすることによって、新しい価値が創造されていく可能性があるのではないかという仮説があり、それを実践していくためにどういう働きかけをしたらいいのかということが、私がテクノロジーのソリューション開発で大変興味のあるところです。円卓会議では半ば強制的にでも人材シェアをやった方がいいというような後押しのご意見を頂くことができました。人と情報を繋ぎ変えるリワイヤリング技術によって、新しい出会いや挑戦がうまれていく。自分には遠い、苦手だと思っていた先入観が払しょくされ、自分では気づかなかった世界が広がる。そんな世界観を目指したいと思っています。

酒井もう1、2回くらいこのテーマでの議論を聞いてみたいです。桑原さんは今後、円卓会議でどのようなことを議論していきたいですか?

桑原さん今回はキャリアトランジションのいわば成功モデルの方々と議論させていただいたので、次は自分のこれからを模索している方々と、挑戦の場をどういうふうに作っていったらいいのかということを話したいです。さらには、そうした人材に対する需要が地域に本当にあるのかということを、ステップを踏んで議論していけるといいなと思いました。

酒井今後、多摩未来円卓会議に期待することはありますか?

桑原さん円卓会議というと、偉い方々が何かを設計していく際のコンセンサスビルディングという位置づけで活用されているイメージですが、「多摩未来円卓会議」では地域や事業をどうしていったらいいのか、などを本音でぶつけ合えるというのが非常にユニークですよね。こうした議論をする場が日本の中でも当たり前になっていくといいなと思いました。


多摩未来円卓会議は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。
毎回異なるトピックテーマについて、企業や行政などの組織が意見を交換し、互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題を共有する関係性の構築を目指します。
多摩未来円卓会議開催のご案内をご希望の方は、こちらのメールマガジンにご登録ください。