多様な視点で考察し見えてくる、エコシステムで取り組むこれからの協創モデル

「多摩未来円卓会議」は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。毎回異なるひとつのトピックについて、企業や行政などが意見を交換。互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題をシェアする関係性をつくることを目指します。
第7回のトピック提供者は、日立製作所 研究開発グループの桑原亜希子さん。「これからのウェルビーイングな社会づくりに向けた地域連携」について議論しました。

多摩未来協創会議ディレクター 酒井博基(以下「酒井」)冒頭の桑原さんからのトピック提供では、まず、現在取り組まれている研究についてお話しいただきました。

日立製作所 研究開発グループ 桑原亜希子さん(以下「桑原さん」)多様な知恵や経験、方法を持つステークホルダーが協働し、取り組んでいく、“社会課題解決のためのエコシステム型事業”の方法論と、その取り組みをどのように評価できるかを研究しています。今回の円卓会議では、健康やウェルビーイングをテーマに地域での協創活動に実績のある方々にご参加頂きましたので、ご意見ご示唆をいただければと思い、研究仮説やソリューションニーズについてお話させて頂きました。

酒井みなさんそれぞれの視点からのご意見や事例の紹介も、とても内容の濃いものだったと思いますが、議論をふりかえってみていかがでしたか。

桑原さんこの研究では、社会的なインパクト、つまり社会価値はあるけれど事業性がまだ見えていない、エコシステムで取り組む社会課題解決型事業の正当性・妥当性を評価する“未財務価値の可視化”にチャレンジしています。具体的な評価方法はこれから開発していきますので、今日はコンセプトのご紹介に留まりましたが、プロジェクトの価値を経済性のみならず社会的な価値も明らかにすることの必要性は、民間企業に限らず、企業と協創する自治体、地域の中間支援組織にとっても共通するニーズであることが確認できました。特に、社会課題に取り組むエコシステム型事業では、最終的に社会的な価値が財務にどう効いてくるのかを見える化し、標準的な比較ができるようなツールがあると望ましく、パートナー選定や投資・事業継続の判断や意思決定の助けになる、といったご意見を頂けたことは、今後の研究の糧になると感じました。

酒井オープンな関係になればなるほど、その評価ツールが重要になってくるというお話しでしたね。

桑原さんそうですね。誰もが認める企業やお得意様のようなパートナーとの取り組みでは、暗黙の信頼や過去の実績などが判断基準となり、「まずはやってみよう」が通用したかもしれません。しかし、未曾有の危機への対応や複数の原因が絡み合う社会課題の紐解きにおいては、新しいプレイヤーと異なるフィールドで、これまで経験したことのないチャレンジを経験していく場面は必ず増えていくと思います。この市場は大きくなっていく、絶対的な価値がある、という目利きでパートナーを見つけたりプロジェクトを育てていくことが不可欠です。しかし現状は、その目利きのできる人や成功体験が少なく、多くの仲間たちが取り組む難しさに直面しているのかなと思います。

今回、経験豊富なゲストのみなさんのお話を伺う中で、結局、プロジェクトというのは人と人との信頼でできていくんだなということを再認識しました。長く続くプロジェクトでも、そこに信念を持ってやり続ける人がいるというのは、新たに共創に加わる企業にとってもすごく信用につながると思いますし、立場が変わっていっても共創を積み上げていくということが、実は見えない重要な資本なんだということが確認できました。

酒井共創の中でブレない軸があれば企業も人も入れ替わっていっていいし、それこそがエコシステムというようなお話もありましたね。本当にみなさんそれぞれのお話がとても印象に残った円卓会議でした。

桑原さんどんなに新しい資源が入ってきても、評価の軸がしっかりあると、そのエコシステムの持続性は担保できるのかもしれないと思いました。例えば、プロジェクトをつなぐ“人”の持つコンピテンシーやスキルセットを明らかにすることが、未財務価値の可視化では重要なファクターになるかもしれません。社会課題解決のためのエコシステ型事業における知的資本や人的資本の関係を明らかにする・・・私がこの研究でやろうとしていることを、私の拙いプレゼンからゲストのみなさんが読み解いて言語化して頂いたりと、非常に有難い場となりました。

酒井今日得たヒントを起点にまた研究が続いていくと思いますが、桑原さんの今後の展望などをお聞かせください。

桑原さん自分が十分に表現できていなかった点を対話によって可視化いただいたので、それらをヒントに、このモデルがどういう意味を持つものなのかを改めて考えたいです。このツールを誰が使うのかという点では、企業だけではなく色んなステークホルダーがそれぞれに使っていく可能性も感じましたので、そんなものが描けるかということを再考してみたいと思いました。


多摩未来円卓会議は、企業×企業、地域×企業の個々のつながりを深めることを目的とした情報交流会です。
毎回異なるトピックテーマについて、企業や行政などの組織が意見を交換し、互いの理解を深め、協創プロジェクトへとつながる共通課題を共有する関係性の構築を目指します。
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