新しい働き方とつながりを生む、地域の場づくり

コニカミノルタが、能作淳平さんとの「Dialog」を振り返りながら「地域×企業」の問いを抽出するための社内会議を行いました。働き方を変える、これからの場づくりとは? コニカミノルタの4名と多摩未来協創会議ディレクターの酒井博基が議論し、2020年10月7日(水)開催のミートアップ会議に向けたテーマを設定します。

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  • 西川義信(デジタルワークプレイス事業本部 先行事業開発部 ワークプレイス開発グループ 係長)
  • 齋藤 純(経営企画部 経営企画グループ アシスタントマネージャー)
  • 入谷 悠(ヒューマンエクスペリエンスデザインセンター チーフデザイナー)
  • 山田和弘(キンコーズ・ジャパン 新ブランド推進グループ マネージャー)

会社での自分、だけじゃない生き方 ― 能作淳平さんとの「Dialog」を振り返って

酒井博基(以下、酒井)今回はいろいろな部署の方にお集まりいただきました。どのような視点でメンバーを選定されたのでしょうか?

西川義信さん(以下「西川さん」)今回、コニカミノルタは“未来の働き方を考えていきたい”という思いを持って多摩未来協創会議に参加しました。私自身は、働き方改革という文脈で仕事をしていて、それに必要なソリューションの提供や、地域で展開するプロジェクトを担当しています。僕はそんなふうにモノやコトを提供する立場なんですが、いろいろな視点からの意見を聞けたらと思っていて。

たとえば、経営企画部でコニカミノルタの社員の働き方を考えているのが齋藤さん。入谷さんにはデザインや体験という側面から話してもらいたいですね。コニカミノルタのグループ企業であるキンコーズからは、「ツクル」の運営にあたっている山田さんに来てもらいました。ツクルは利用目的を分けたテーマ型のコワーキングスペースであり、新宿の「ツクル・ワーク」のほか、構想として「ツクル・ラボ」「ツクル・ホビー」もあります。このメンバーで多角的に“これからの働き方”について話せたらと思っています。

酒井では、まずは能作淳平さんとの「Dialog」の振り返りから。西川さんはどのような気づきを得ましたか?

西川さん近年は働き方の自由度が増し、会社での自分だけじゃない生き方をしようとしている人が増えてきました。そんななかでコロナ禍が起こり、テレワークが増えて、自分の時間も増えた。これまで、働く場所といえば会社かコワーキングスペースの2択でしたが、たとえばマイクロツーリズムといった、非日常的な働く環境を身近に求め始めるんじゃないのかな。

コニカミノルタの丸の内オフィスでは、「集中ゾーン」「準コラボゾーン」「コラボゾーン」と、ワンフロアの中で働きたいモードごとに空間が分かれていますが、そういう場所が自分の住んでいる地域のなかで選択していけるようになったらいいんじゃないかと。多摩地域にはいろんな特徴ある場所やものづくりをしている場所があるので、今まで自分のためだけに使っていた場所も開いてくれると、新たな出会いが起きる場所がさらに増えていく。そうすると、社会も変わっていくと思います。

Dialogでは、一方でオフィスに行くことの価値についても話も出ました。チームが集まる拠点が、テーマ型オフィス、行って楽しいテーマパークのようなオフィスだったら、チームの仕事が進むとか。

ビジネスパーソンに向けた「ツクル・ワーク」新宿センタービル店。

酒井3.11から徐々に「暮らす」と「働く」の距離感が縮まり、コロナ禍でさらに働く場が都心のオフィスから自分の暮らしの場に移った印象があります。

西川さんたしかにそうですね。僕が地域での活動を始めたのが3.11の前後で、たぶん、人との新しいつながりを意識し始めたんだと思うんです。会社や仕事とは違うつながり方が生まれるような活動をする人が増えましたよね、3.11以降は。

入谷 悠さん(以下「入谷さん」)コミュニティを形成しやすくなりましたよね。それまで仕事仲間としか会話していなかったのが、地域で助け合おうという動きになって街の人と話がしやすくなったような気がします。

働く場所の選択が地域コミュニティへの入り口に ― コニカミノルタが描く未来予想

酒井生きがいを中心とした働き方、つまりコニカミノルタが目指す“時空を超えた働き方”になると、どんなライフスタイルが見えてくるでしょうか。

入谷さん今は、コロナ以前とはまったく違う観点で生活様式を変えることを強いられています。コロナ前から、社内では通勤時間をどう削減して効率化するかというところから始めて、リモートでどこまで対応できたらいいのかみたいなところを考えていて。ほかにも、介護や子育てで時短勤務にせざるを得ない人に対しての対応を考えるなかで、遠隔でも働けるような仕組みがあるといいよねという話をしていたんです。

酒井社内制度としてはどのような形になっているのですか?

齋藤 純さん(以下「齋藤さん」)これまでの社内制度は、出社して集まることが前提になっているものが大半でした。でもこういう時代になり、各種制度も切り替えが必要なんじゃないかという話は出ています。例えば評価制度を、ジョブ型に切り替えたらどうか、などです。直近でも、自宅でのテレワーク環境に必要な椅子やデスクを揃えるための補助制度が福利厚生として始まりました。コニカミノルタの拠点はいろんな地域にあり、単身赴任の人もいるんですが、それも将来的には、単身赴任をせずにテレワークという形で参画するアプローチに切り替えていけるんじゃないかなどもあり、全体の生産性につながるように、変化に対応して制度を見直す議論が始まっています。

酒井みなさんは、コロナ前は出勤にどれぐらいの時間をかけていたんですか?

山田和弘さん(以下「山田さん」)僕は1時間ちょっとですね。こういう状況になって、通勤にずいぶん時間を使ってたな、ストレスだったんだなと気づきました。でも、今はまだ過渡期であり、今後どういう状況になっていくかはわかりません。こないだ聞いた専門家の話では、3.11のときにテレワークが広まったものの、結局はもとに戻った、だから今回も懐疑的に見ていると。3.11のときはテレワークは苦しい体験という側面が大きかったので、コミュニティが家のそばにあるとか、そこで働く楽しさといったポジティブな状態にならないと、今回もまた戻っていくかもしれないとも言っていました。通勤時間が省かれてラクだなと一時的に思うだけで終わってしまうんじゃないかっていうのを聞いて、ああなるほどなと。自分が住んでいるところの周辺や、身近な人となにができるのかを考えるタイミングなのかなと思います。

入谷さん生まれ育った土地に近いとそういう気持ちが強くなりそうですよね。地元に貢献したいとか、地域の活性をよくしたいと考えやすいんじゃないかと思う。

西川さんたぶん街への関わりにも段階があって。僕も今住んでいる国立は生まれ育った場所とはまったく違うので、ずっといち消費者でしかなかったんですよ。それが、ひょんなことで街のコミュニティに入って、「楽しいな」から始まり、そこから街のことを手伝うようになった。最初の分かれ道としては、コミュニティに入るきっかけがあるかないかですよね。たぶんこれからは、そのきっかけが“働く場所の選択”になると思うんです。地域にある働く場所に愛着を持ち始めた人がちょっとずつコミュニティに参加することで、その人も変わるし、地域も変わっていくという流れが生まれるのではないでしょうか。

齋藤さん入りやすさってけっこう大事で、いかにいいコミュニティがあったとしても、よそから来た人が入りにくかったらあんまり意味がないですよね。自治会に入るとか、子どもの幼稚園のコミュニティから広がっていくようなきっかけがあると参加しやすいと思います。そのひとつに“働き方”が加わるかっていうのが、まさに今回の話。地域での働き方としてこういうものがあって、それだったらちょっと興味があるなっていう入り方があると、地域と働き方と愛着をうまく合体させるようなことができるんじゃないでしょうか。

地域の潜在能力をコミュニティで吸い上げる ― コニカミノルタの課題意識

酒井コニカミノルタが多摩エリアに“未来の働き方”がテーマの場所を作るとしたら、どんなものになるでしょうか。

西川さん僕は地域でシェア工房を運営しているんですが、面白いのは、工房でなにかを始めた人、例えば専業主婦だった人がその道で開花することがあるんです。さらに、工房の利用者同士が協力し合って仕事を始めたりもする。僕はそんな人たちの後押しをしているわけですが、そういう熱意とかプロジェクトの種をもっとみんなに見てもらう仕組みがあってもいいのかなと思います。「これやりたい」っていうプロジェクトに共感する人が、お金だけじゃなくて能力も含めて集ってくるっていう。ウェブサイトで見られるようにしてもいいし、さらには実際に触れられる場所があることに価値があるのではないでしょうか。それが街単位だったら、本人にも会いに行けますしね。

入谷さん以前、区議会議員にヒアリングしたことがあって、その人たちもやっぱり地域の困りごとを吸い上げたいとか、そこをなんとかしてあげたいっていう気持ちがあるんですよね。そういう行政の人にもつなげたり、応援したい企業にスポンサーになってもらったりとか、いろんな人を巻き込んだコミュニティとして形成しやすい。いい手だなと思います。

山田さんそういえば、キンコーズのお客さまには、仕事をリタイアして自分史を作っている人がけっこう多いんですよ。地道に家系図をたどったりするその作業がわりと孤独に見えるので、たとえばそういうことも、コミュニティを通じた人とのつながりで楽しくすることができたらいいですよね。

西川さんたとえば子育て世代が作ってあげて、その代わりじゃないですが、子育てについて教えてもらうっていう形もニーズがありそうですね。

テーマ型の働く場所がネットワークをつくる ― 次回「Meetup」に向けて

酒井ミートアップのテーマにはどのようなものが考えられますか?

西川さんやはり、新しい働き方ができる場所をつくることでしょうか。自分の持っている商いや作業の場を一部開きたいと思ってる人と組めたらいいですね。場を開いたら、セキュリティ面やデータのやり取り、あるいは契約業務も発生するでしょうし、そこで生まれてくるものを世の中につないでいくっていうプラットフォームも必要になる。そこの部分をコニカミノルタがサポートできたら。自社のためだけに持っている場所は、ただの負債だと捉えている企業はあると思うんですよ。僕は、そういうところと新たな掛け算をしてみたいななんて思います。場所のテーマはあんまり考えていなくて、「育児」とか「農」とか意外なものがきたほうが面白いかもしれません。

酒井とがったテーマを持つ場所が街に点在していて、そこをつないで将来プラットフォームができあがっていくようなイメージでしょうか。

西川さんそうですね、そういう場所がひとつできたら、別の人が始めたときに、共通の仕組みでつないであげることもできるんじゃないかと思います。さらに、そこでつくるものに紙モノがあったらキンコーズにお願いするとか、いろいろとコラボレーションもできそうです。

入谷さん欲を言えば、場所のテーマにバリエーションがあったほうがいいですよね。僕たちが見えていない、一見組み合わせが難しそうなものもあるかもしれないなと思って。そういう、自分の場所を開きたい企業や団体、個人がメインになるでしょうか。

西川さんコンセプトは、自分時間を街がつくっていくみたいなこと。コニカミノルタとしては、企業に対してはこれまで通り作業時間っていうのを減らしていく一方で、その先の創造時間や自分時間が得られる場所を、仕組みやプラットフォームで支えるというイメージです。

今、働き方を可視化するサービスにも取り組んでいるので、もしも企業がユーザーとして利用者を管理したいという要望があったら、そのサービスを企業に提供することもできると思います。場所に対して、プラットフォームづくりと企業に対するサービスの両面からサポートできたらいいですね。