第21回 野球ビジネスによる多摩エリアの活性化

日本で人気のスポーツである野球は、大谷翔平選手の活躍によりさらに関心を集めています。多摩エリアでも、2025年に稲城市で「TOKYO GIANTS TOWN(東京ジャイアンツタウン)」がオープンし、新しいGIANTS球場や水族館がOPEN設置されます。このプロジェクトを通じて、野球がどのように地域に貢献し、地域の経済と文化に影響を与えるかについて考察しました。

監修:多摩大学経営情報学部教授 長島剛

1. 野球ビジネスの多面的な地域連携

野球ビジネスは、プロ野球チームの運営、グッズ販売、メディア放送、広告、施設運営など、幅広いビジネスチャンスを提供します。以下の表1は、野球ビジネスが地域のさまざまな産業とどのように連携できるかを示しています。

表1.スポーツ(野球)に関わる地域ビジネスのキーワード
日本標準産業分類(抜粋)地域ビジネスとの連携キーワード
農業・林業・漁業芝生産、多摩産材(バット)、都市農業
建設業球場建設、道路整備
製造業バット製造、グローブ製造、グッズ製造、酒類等
情報通信業ニュース配信、タウン誌、マーケティングリサーチ、スポーツ情報配信
輸送・郵便業機材運搬、記念切手
卸売業・小売業スポーツ用品の輸入・輸出・販売・リサイクル
金融業・保険業傷害保険、スポーツ産業への融資、株売買
不動産業、物品賃貸業スポーツ用品のリース、施設運営、警備
学術研究、専門・技術サービス業選手マネジメント、トレーナー、スポーツ関連の研究
宿泊業、飲食サービス業宿泊施設、スポーツバー、スポーツカフェ
生活関連サービス業、娯楽業大会運営、イベント企画、バッティングセンター、地域人材の雇用、アニメ産業
教育・学習支援業専門学校、野球教室
医療、福祉スポーツ医療・外来、診療所
公務自治体との連携、補助金、ふるさと納税
※Spportunity HP「『スポーツビジネス』ってなに? スポーツからどんな価値が生まれるか?」(https://media.spportunity.com/?p=2436)を参考に作成

表1で示されたように、野球ビジネスはさまざまな地域産業と連携できる可能性があります。これを活かし、どのように具体的な地域連携を進めるかが重要です。

例えば、地元の商店街と協力して定期的なイベントを開催することにより、地域の集客力を高めることが考えられます。また、地域の特産品を活用したグッズ開発や、新たな観光資源としての野球関連施設の運営も、地域経済の活性化に寄与します。こうした取り組みを通じて、地域の雇用創出や、地元ブランドの向上を目指します。

2. よみうりランドへのインタビュー

私たちは、株式会社読売新聞グループ本社のグループ会社である株式会社よみうりランドの、ボールパーク事業部のみなさまに地域貢献活動についてインタビューを行いました。インタビューに応じてくださったのは、西村卓也氏、奥谷祐氏、坂東秀憲氏、石川琴音氏です。私たちがまとめた表1(スポーツ(野球)に関わる地域ビジネスのキーワード)を見ていただいたところ、こんなにも地域の産業と繋がりを作ることができるのかと感心してくださり、地域における野球ビジネスの可能性がとても幅広いものなのだと再認識することとなりました。そして、実際に野球ビジネスは地域活性化にどんな貢献ができるかについて聞いてみました。同社が地域活性化として行っていたことは、地域の商店街とのイベントでした。商店街で買い物をした方がくじを引き、それをジャイアンツ球場に持っていくとサイン色紙などが当たるというものです。100名ほどの参加者を見込んで開催したイベントには倍以上の参加があり、成功を収めた取り組みだったそうです。商店街の方からはまたやってほしいという要望もあり、地域活性化へ貢献したイベントとなりました。それを受けて私たちは、商店街のイベントだけではもったいないと思い、地域の活性化という視点ではもっと長期的な連携をしなくてはいけないのではと質問をしてみました。よみうりランドのみなさまも「もっと地域との取り組みを行っていかなければいけない」とお話ししてくださり、野球好きの私たちにとってとてもうれしい取材となりました。

よみうりランドが地域貢献に注力することで、地域経済の活性化が図られます。商店街や地元企業への集客が増加し、地域内での経済循環が促進されるとともに、新たな雇用機会が生まれます。これにより、地域住民同士のつながりが強化され、コミュニティの一体感が向上するでしょう。また、地域ブランドの向上や観光の促進が期待され、地域の魅力が広く知られることになります。さらに、地域イベントの充実や地域資源の効果的な活用を通じて、地域社会の発展に寄与します。このように、よみうりランドの地域貢献は、地域全体に多くの価値を提供し、持続可能な発展を促進することが期待されます。

3. 野球と健康促進の関連性

2019年に発表された早稲田大学と株式会社西武ライオンズの共同研究では、プロ野球観戦が高齢者の健康に良い影響を与えることが証明されました。これを巨人軍の活動に適用することで、地域の健康促進と経済活性化の新しいモデルが生まれる可能性があります。例えば、高齢者向けの特別観戦ツアーや健康イベントの開催が、地域住民の健康意識を高め、地域全体の活力を向上させることが期待されます。

4. 結論と今後の展望

「野球ビジネスと地域産業の連携」、「よみうりランドの地域貢献」、「野球による健康促進」の3つのテーマは、相互に関連し合い、地域社会全体にポジティブな影響を与える可能性を秘めています。野球ビジネスを通じて、地域資源の活用やコミュニティの絆を強化することで、多摩エリア全体の発展が期待されます。今後は、これらの可能性を最大限に活用し、持続可能な地域社会の構築を目指すことが重要です。

多摩大学ながしまゼミ3年
此内将貴、鈴木伶奈、山川剛史

※参考文献
1.インターネット
2.インタビュー 2023年9月28日
  • ・よみうりランドボールパーク事業部 法人営業推進課長兼運営課長 西村卓也 氏、運営課兼経営企画室経営企画課係長 奥谷祐 氏、運営課法人営業推進課 坂東秀憲 氏、法人営業推進課兼運営課 石川琴音 氏